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東京地方裁判所 平成3年(ワ)7954号 判決

原告

古明地豊弘

右訴訟代理人弁護士

下林秀人

被告

黒田孝

右訴訟代理人弁護士

高芝重徳

主文

一  被告は、原告に対し、金一八三万〇〇九〇円及びこれに対する平成三年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その四を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金二二七万八一七〇円及びこれに対する平成三年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告経営にかかる黒田病院(以下「被告病院」という。)の人工透析室(以下「透析室」という。)所属の技師として勤務していた原告が、被告から、事実に反する出入業者との不祥事を疑われるなどしたため、退職に追い込まれたとして、被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料及び弁護士費用(以上に対する不法行為後の遅延損害金を含む。)の支払を求めるとともに、被告との労働契約等に基づき、在職中に支給を打ち切られた四か月分の責任手当、減額査定された冬季一時金(賞与)の差額及び不支給とされた退職金(以上に対する弁済期経過後の遅延損害金を含む。)の支払を求めた事案である。

一  争いのない事実等

1  (当事者)原告は、昭和五五年三月、被告と労働契約を締結し、以来、被告が経営する被告病院の透析室の技術者として勤務してきたが、平成二年一一月一三日、被告に対し、平成三年一月二〇日をもって退職したい旨の退職願を提出し、同日をもって被告病院を退職した。

2  (責任手当)原告は、被告から、被告病院の透析室技師として、平成二年九月当時、基本給のほかに月額二万円の責任手当の支払を受けていたが、被告は、同年一〇月分から平成三年一月分までの四か月分の責任手当合計八万円を原告に支払わなかった。

3  (冬季一時金)被告は、原告に対し、平成二年一二月七日、同年の冬季一時金(賞与)を支払ったが、その金額は二二万五四二〇円にとどまった。

4  (就業規則等)被告病院の就業規則、賃金規程及び退職金規程には、別紙(略)のとおりの条項(抜粋)がある(賃金規程一二条以外の定めは、〈証拠略〉により認められる。)。

二  争点

1  被告の原告に対する不法行為の成否

(原告の主張)

(一) 被告病院透析室では、従前より看護主任の太田和子(以下「太田主任」という。)の人物、勤務態度に大きな問題があり、これに耐えかねた看護婦が数名退職したことがあったが、平成二年夏ころには太田主任に対する他の職員らの不信と不満が一斉に高まって透析室の運営上も放置し得ない状態となった。

(二) そこで、透析室の責任医師であった宍戸寛治(昭和大学藤が丘病院腎臓内科所属。以下「宍戸医師」という。)と透析室職員一同の代表である原告の二名が、平成二年一一月初めころ、被告の妻で被告病院の相談役である黒田美和子(以下「黒田相談役」という。)に会って、太田主任を退職させるよう申し入れることにより、経営者である被告に申入れをした(原告が宍戸医師とともに黒田相談役に右趣旨の申入れをしたことは争いがない。)。

(三) ところが、被告(実際にはその意を受けた黒田相談役)は、一旦は太田主任を退職させると確約したにもかかわらず、間もなくこれを撤回し、平成二年一一月ころから一二月ころにかけて、透析室職員一同の意向を代弁し、かつ、被告病院に対する善意から右申入れをした原告を疎んじ、ありもしない出入業者との不祥事を疑うなどして原告を悪者扱いし、果ては退職に追い込んだ。そのため、原告は、平成三年一月二〇日、退職のやむなきに至り、他の透析室職員も看護婦では太田主任を除く三名全員、技師では産休中の一名を除く二名が相前後して一斉に退職するという事態に発展した(原告と右看護婦、技師が一斉に退職したことは争いがない。)。

(四) 原告は、被告の右不法行為により、次の損害を被った。

(1) 慰謝料

被告は、原告を悪者扱いした上、退職を余儀なくさせ、原告に多大な精神的苦痛を与えたものであり、これに対する慰謝料としては三〇万円が相当である。

(2) 弁護士費用

原告は、被告の不法行為のためやむなく本件訴訟の提起、追行を弁護士に委任したものであり、その弁護士費用として三〇万円の損害を被った。

(被告の主張)

被告に何ら不法行為はなく、被告が原告に対して損害賠償責任を負担するいわれはない。問題があったのは、後記のとおり、太田主任ではなく、原告である。

2  平成二年一〇月分から平成三年一月分までの責任手当の請求権の有無

(原告の主張)

責任手当は、その支給が被告の裁量に任されているものではなく、労働契約において合意された賃金の一種であるから、原告は、右責任手当合計八万円(各月二万円)の請求権を有する。原告に対する責任手当の打切りは、太田問題をめぐって、黒田相談役が原告を嫌悪したことから、被告が原告に対して行った嫌がらせである。

(被告の主張)

被告病院の賃金規程一二条は、責任手当につき、別紙記載のとおり、「各人の職務に応じて、責任手当を支給することがある。」と規定しており、被告が責任手当を支給するかどうかは被告の裁量によるものである。したがって、原告が責任手当の請求権を有するものではない。

3  平成二年の冬季一時金(賞与)の差額分の請求権の有無

(原告の主張)

被告とその職員との間には、年間を通じて何か月分の一時金を支給するといういわゆる年間協定に当たるものが存在し、平成二年の冬季一時金についても、当該労働者につき長期欠勤等特別な事由のない限り二・五か月分を支給するとの提示及び約束があった。したがって、原告は、被告から平成二年の冬季一時金として少なくとも四三万三五〇〇円(月額基本給一七万三四〇〇円の二・五か月分)の支給を受ける権利を有していたものであるから、既に支払を受けた二二万五四二〇円との差額二〇万八〇八〇円について、賃金としての請求権を有する。そして、被告が右一時金を減額した理由は、責任手当の打切りの場合と同様である。

(被告の主張)

被告の賃金規程二六条は、賞与につき、別紙記載のとおり、「賞与は、病院の業績をもとに、従業員の勤務成績に関する人事考課、出勤率に基づいて各人別に算定する。」と規定しており、被告が原告に支給した金額は右規定に従ったものである。したがって、原告は、平成二年の冬季一時金(賞与)について、差額請求権を有するものではない。

4  退職金請求権の有無及びその金額

(一) 原告に、退職金の支給制限事由(退職金規程一〇条の懲戒解雇に相当する事由)があるかどうか。

(被告の主張)

原告は、次のとおり、被告病院透析室の臨床工学課技士長の地位にあることを利用して医療機器の仕入先を操作し、職務上の指示、命令を無視して上長に反抗し、また、看護婦らを煽動、教唆して院内の秩序を乱すなどしたものである。したがって、原告には被告病院の就業規則四五条の二号等に該当する事由があるから、退職金規程一〇条により、退職金請求権はないというべきである。

(1) 被告病院では、平成二年六月、透析室と癒着関係のある仕入先を他の仕入先に変更するまで、透析室の責任により、薬品医材料を一〇パーセント前後高い価格で購入させられていた。また、透析室では、同月ころから、人工腎臓、血液回路の在庫の帳尻が毎月合わなくなり、約二〇パーセント前後の誤差が発生していた。さらに、血液回路六三本が同年一〇月六日(土曜日)に亡失し、同月一二日、原告から、盗難事件として被告に報告された。これらは、原告が医療機器の仕入先を操作していたことによるものと考えられる。

(2) 原告は、使用可能な人工腎臓などの製品を、上司の許可も後任者に対する申し送りもせず、被告病院の屋上倉庫に放置したため、その大多数が期限切れになってしまった(数量は別として、期限切れの人工腎臓が倉庫に置かれていたことは争いがない。)。また、原告は、使用可能な透析装置(時価約二〇〇万円相当)を故意に分解破損し、放置したまま退職した。以上により、原告は、被告病院に多額の損害を与えた。さらに、原告は、在職中、腎臓障害で被告病院に人工透析を受けに来ている患者に対し、技士長として許しえない対応をしたばかりでなく、後任の透析技師にも十分な引継ぎをしなかった。

(3) 原告は、平成二年一〇月一三日、パート医師の宍戸医師と二人で黒田相談役に面会を求め、太田主任と技師の岩田綾子(旧姓鈴木)を辞めさせるよう求めた(原告が、宍戸医師とともに黒田相談役に面会を求め、太田主任を辞めさせるよう求めたことは争いがない。)。その理由は、技師らは夜勤を増やしてもらっているのに、太田主任は看護婦らの希望どおり夜勤回数を増やしてくれない、岩田綾子は生意気で口答えするというものであり、原告は、「太田主任を辞めさせないなら、他の看護婦ら全員を辞めさせる。」と言って、黒田相談役を脅迫した。黒田相談役は、しばらく考えた上で返事すると答えた。調査の結果、太田主任と岩田綾子だけが問屋やメーカーの食事への招待に応じなかったことが判明した。

(4) 原告は、技士長の地位を利用して、透析室の他の技師や看護婦らに一斉に退職願を提出させ、技師一名、看護婦一名を残して全員を退職させた(原告と右各一名を除く技師、看護婦とが一斉に退職したことは争いがない。)。すなわち、原告の煽動、教唆により、透析室看護婦武藤麻起子が平成二年一〇月二〇日退職願を提出し、同室の技師遠藤広吉、看護婦生田幸の二名が同年一一月一三日に、同年一二月二〇日をもって退職する旨の退職願を提出した。原告も、同年一一月一三日に、平成三年一月二〇日をもって退職する旨の退職願を提出し、技師吉田勝雄も同日をもって退職すると原告が申し出た。このように、原告が透析室の技師、看護婦を一斉に退職させたことは、人工透析を受ける患者の生命維持を不可能にするもので、医療従業員としての職務違反行為である。

(5) 原告は、平成二年一一月五日、自己の職権を利用して、上司の許可なくテルモ株式会社(以下「テルモ」という。)からテレビの寄贈を受けたにもかかわらず、透析室職員らで購入し、又は非常勤医師から寄贈されたかのように見せかけ、部下の口裏を合わせるよう指示し、右テレビを被告病院の屋上倉庫に隠し置いた。

(6) 原告は、平成二年一二月九日、被告病院へ医師を派遣している昭和大学藤が丘病院腎臓内科教室の忘年会に、参加しないと被告病院に予告していたにもかかわらず、技師の遠藤広吉、吉田勝雄、看護婦の武藤麻起子、坂本ツヤ子、生田幸とともに出席し、被告病院から出席していた副院長黒田俊(以下「黒田副院長」という。)や、昭和大学の教授、講師、関連病院の院長の前で、「わたしたちは全員黒田病院を退職します。」と言い放った(原告ほか右五名と黒田副院長が右忘年会に出席したことは争いがない。)。右挙動は、被告病院に対する嫌がらせ以外のなにものでもなく、黒田副院長に恥をかかせ、暗に被告病院透析室の運営が危機に陥っていることを想像させ、被告病院の信用を著しく傷つけたものである。

(7) 技師の岩田綾子が平成三年一月八日産休に入ったところ、技師の原告及び吉田勝雄は、その直後の同月一〇日から休暇に入った。

(原告の主張)

原告に被告主張のような懲戒解雇に相当する事由はない。すなわち、

(1) 原告を含め透析室の技師は、医療機器の納入価に関与する立場にはなく、最終的に納入価を決めるのは黒田相談役であった。

(2) 期限切れのホロファイバー(人工腎臓)は、医師の指示で入庫したものである上、透析患者の変化等により使用されないまま残ったものにすぎない。

原告はセントリー2RXという透析装置を分解したことはあるが、これは倉庫に入れるとき、そのままでは入らないためポールを分解したもので、他の部分は分解も破損もしていない。右装置はそれ自体の古さなどから、現況では使用困難であり、病棟用や他の装置が故障した際に使用することになっていた。このことは、黒田副院長も了解していた。また、使用していない装置(NCB―1)が透析室に二台あるが、この機械は破棄することになっていた。平成二年末ころ他の機械が使用できなくなったとき、使える部品があるかもしれないということで、右装置の中を開けたことがあるが、これは黒田副院長の判断で行ったことである。また、原告は、与えられた条件の下で可能な限り後任者への申し送りを行ったし、原告の退職後も残った岩田綾子からも申し送りがされているはずである。後任者がいつから就職するかなどを原告に知らせず、申し送りを十分行える状況を作らなかったのは、被告病院自身(特に黒田相談役)である。

(3) 原告を含む透析室職員が相次いで被告病院を退職したのは、被告が太田主任に対する透析室職員の不信と不満をまともに取り上げようとせず、かえって原告ら技師を悪者扱いしたり、冬季一時金を減額するなどの行為に及んだため、各人ともこれ以上被告病院への勤務を続けることはできないと判断したからである。

(4) 被告主張のテレビは被告病院透析室に寄贈されたものであり、このことは、太田主任を含む透析室の職員全員が知っていることである。

(5) 原告ほか五名が昭和大学藤が丘病院の忘年会に出席したのは、当時被告病院透析室で診療していた同大学藤が丘病院の宍戸医師から出席の誘いがあり、幹事である小岩医師の了解も得たからであり、右出席は、有志一同として個人的になしたものである。また、右忘年会に出席した関連病院の職員は、いずれも原告ら被告病院透析室の職員が退職することを右忘年会以前から既に知っていた。原告は、右忘年会の席上、あいさつを求められたので、「黒田病院透析スタッフ(忘年会出席者)一同、黒田病院を去ることになりました。先生方、各施設の方々、今までお世話いただきありがとうございました。」とだけあいさつしたものである。その後、同席していた黒田副院長は、原告、遠藤広吉及び吉田勝雄のところにやって来て、各人に握手を求めた上、「いろいろあったけれど、こういう形でやめるのは残念だけれど、がんばってくれ。」と述べた。これは、原告の発言が何ら問題となるものでなかったことを端的に物語っている。

(二) 原告の退職金の額はいくらか(退職金規程七条の退職事由別係数のうち、いずれを適用すべきか。)。

(原告の主張)

原告は被告の前記不法行為により退職せざるを得なかったのであるから、退職事由別係数は、「病院の都合による解雇のとき(退職金規程七条1(4))」に準ずるものとすべきである。そうすると、原告は、退職金として次のとおり一三九万〇〇九〇円の支払を受ける権利を有している。

(計算式)

〈1〉 退職金算定基礎額=退職時の基本給=一七万三四〇〇円

〈2〉 勤続期間(月数)=一三〇

〈3〉 勤続期間別退職金支給率=〇・七四

〈4〉 退職事由別係数=一

〈5〉 原告の退職金=〈1〉×〈2〉×1/12×〈3〉×〈4〉=一三九万〇〇九〇円

(被告の主張)

仮に、被告が原告に対して退職金支払義務を負うとしても、原告の退職は「従業員の自己都合によるとき(退職金規程七条2(1))」であるから、その額は、次の計算により九〇万三六〇〇円にとどまる。

(計算式)

〈1〉 退職金算定基礎額=退職時の基本給=一七万三四〇〇円

〈2〉 勤続期間(月数)=一三〇

〈3〉 勤続期間別退職金支給率=〇・七四

〈4〉 退職事由別係数=〇・六五(従業員の自己都合によるとき)

〈5〉 原告の退職金=〈1〉×〈2〉×1/12×〈3〉×〈4〉=九〇万三六〇〇円(一〇〇円未満切上げ)

第三争点に対する判断

一  不法行為の成否(争点1)について

1  争いのない事実、証拠(〈証拠・人証略〉)及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

(一) 被告病院の平成二年春ころの透析室の職員としては、責任医師として、宍戸医師が昭和大学藤が丘病院から週に一回来院して診療に当たり、その他の日については昼間は黒田副院長が回診、夜間は右藤が丘病院の医師らが毎日交代で来診しており、技師として、臨床工学課技士長(主任)の原告以下、遠藤広吉、岩田綾子(旧姓鈴木)、吉田勝雄がおり、看護婦として、太田主任以下、坂本ツヤ子、生田幸、武藤麻起子がいた。太田主任は、以前被告病院に勤務していたが、一旦退職した後、同年一月から再び被告病院に勤務し、同年三月ころ看護主任に就任したものであるが、他の看護婦と組んで仕事をするとき、主任として自らその勤務表を作成したにもかかわらず、組んだ相手の看護婦に専ら透析治療の仕事をさせ、自らは別室で勤務表の作成や書類の整理など負担の軽い事務的な仕事ばかりをしていたため、他の看護婦らとの折り合いが悪かった。また、患者に対して、感情的になって叱りつけたりすることが多かったため、患者からも苦情が寄せられていた。このような中で、太田主任の勤務態度や協力態勢について不満を持つ看護婦の関口ルミ子、永里久美子(同人らは坂本ツヤ子、生田幸の前任者)が退職し、透析の業務に支障が生じたこともあった。太田主任は、他の看護婦らに対して勉強会の開催を提案し、これを実施したことがあったが、長続きせず、結局、一、二回開催しただけで止めてしまった。さらに、日常、会議に出席しても、その決定事項を他の看護婦らに伝達しないことが多く、時間外勤務についても自分だけに割り振り、その手当をもらっていた。このような問題を解決するため、太田主任を含む透析室の職員が集まって話し合ったことがあったが、次第に太田主任は話合いに参加しなくなったことから、事態は改善されなかった。そのため、看護婦らは、同年八月ころ、太田主任の上司に当たる外来婦長の内藤さき子に頼んで、同人から太田主任に改善の申入れをしてもらったが、効果はなかった。そこで、宍戸医師が、透析室の技師、看護婦の全員から個別に事情聴取をしたところ、太田主任が透析室のリーダーとしての職務を全うしていないので、他の看護婦や技師が一緒に仕事をしたくないというのが一致した意見であった。そのため、透析室職員の間では、太田主任を他の部署に配置換えしてもらうか、同主任に退職してもらうかしかないという結論に達し、宍戸医師と原告が透析室職員の代表として、平成二年一〇月一三日、被告病院の院長(被告)の妻である黒田相談役に対し、太田主任を辞めさせてほしい旨の申入れをした。当時、黒田相談役は、被告病院相談役の地位にあったものではあるが、実質的には、院長(被告)や黒田副院長に代わり、被告病院の経理をはじめ事務全般を取り仕切っており、病院経営の中枢としての役割を果たしていた。黒田相談役は、右申入れに対し、辞めてもらう方法は問題であるとしながらも、辞めさせることについてはこれを了承した。

(二) ところで、透析室では、平成二年一〇月六日ころ、人工透析に使用する血液回路が紛失したことがあった。また、透析室では、休憩室のテレビが壊れて使用不能となっていたところ、たまたま出入業者のテルモから、透析室に対し、何か欲しい物はないかとの問い合わせがあったことから、太田主任ほか透析職員の了解のもとに透析室にテレビを寄贈してもらうこととなり、同社にその旨連絡して、平成二年一一月五日、同室にテレビを寄贈してもらったことがあった。このようなことから、黒田相談役は、原告の前記申入れ後、太田主任の問題に対する解決策の検討をすることもなく、かえって、透析室に右テレビの寄贈を受けたことや血液回路が紛失したことなどにつき、透析室の技師らが出入業者からリベートをもらったり、医療機器を横流ししている不正があるのではないかとして、透析室の技師らに疑惑の目を向けるようになり、その懲戒処分を行う方向で事態の解決を図ろうとした。そして、黒田相談役は、透析室の技師を各別に呼び、そのことに関して事情聴取を行った。同相談役は、その際、遠藤広吉に対しては、原告が不正行為を行っているから、原告に従わないようにと告げた。しかし、透析室にテレビの寄贈を受けたこと自体は格別問題になることではなく(黒田相談役も本件の証人としてその旨を証言している。)、また、血液回路の紛失の件については、原告は、調査の上、同年一〇月八日、口頭で黒田相談役に報告し、更に同月一二日、書面で報告を済ませており、原告においてこれを横流ししたものでもなく、結局、紛失の原因は不明であった。

また、ホロファイバー、ダイアライザーなどの人工腎臓や透析装置などの機器の導入に際し、メーカーや機種の選定について技師らが医師から意見を求められ、これに答えることはあったが、機種の選定は責任医師である宍戸医師が担当し、導入、納入価格の交渉、決定は最終的には黒田相談役がなしており、技師らが介在する余地はなく、実際に介在したことも、右機器を黒田相談役に無断で業者に注文したこともなかった。

なお、被告病院では、平成二年一二月三日、透析室と倉庫を新館に移動したが、そのことがきっかけとなって、原告の退職後、透析室の人工腎臓や透析装置が使用期限を徒過して残留していることが被告に判明し、被告は、原告がこれらを無断で捨てたものではないかとの疑いを持った。しかし、これらは、使用期限が過ぎたもの、業者から試供品としてもらったもの、対象となる患者が居なくなったため在庫として残ったものにすぎず、しかも、それらの選定、使用、廃棄は、医師の責任においてなしており、原告が処分の権限を有するものではなく、かつ、原告が勝手に廃棄したものでもなかった。そして、それらのものは、原告が透析室の技士長になる以前に期限徒過により廃棄されたまま、残留されていたものがほとんどであった。

(三) このように、原告をはじめ透析室の技師らが不正行為を行ったことはなかったにもかかわらず、被告病院側から不正の疑いをかけられ、一方、太田主任の配置転換又は退職が実現しない状況の中で、透析室職員の間では、被告病院の対応に不信感を抱き、被告病院を退職したいと思う者が多くなった。しかし、原告は、透析室職員の退職を煽動したことはなく、むしろ技師の遠藤広吉、吉田勝雄や看護婦らに対して退職を思い止まるよう説得していた。遠藤広吉については、臨床工学技士の資格を取得するため平成三年春に編入試験を受験する予定であったが、退職すると、それができなくなること、吉田勝雄については、三年間の勤務を条件に被告から約九〇万円の奨学金を受けていたので、退職すると、その期間に足りず、全額を返還する必要があり、また、その時点では臨床工学技士の資格を取得していなかったので、退職しても適当な就職先が見つかるかどうか明らかでなかったことなどから、原告は、両名を引き止めようとした。しかし、遠藤広吉は、前記テレビの寄贈を受けるに当たって、テルモに直接連絡をしたため、黒田相談役から事情聴取を受けた際、始末書を書くよう要求された上、もしこれに従わない場合、他ではこの仕事をやれないようにしてやると言われ、意に反して始末書を書かされたことや、自己の出捐により購入した自動車についてまでメーカーから金員をもらって、それを充てたのではないかと疑いをかけられたことから、被告病院を退職することを決意した。吉田勝雄も、テルモの血液回路の紛失などについて被告病院側に不正行為の疑いを持たれ、不愉快な思いをしたこと、被告病院の一連の対応に対して不信感を持ったこと、太田主任とともに勤務するのは困難であること、自分の平成二年冬季賞与の額が一か月分程度にすぎなかったことなどから、同様に退職を決意し、同年一二月七日、被告に対し、平成三年一月二〇日をもって退職したい旨の退職願を提出した。看護婦の武藤麻起子、生田幸及び坂本ツヤ子も、太田主任の問題や、被告病院のそれに対する対応への不満から、退職を決意した。武藤麻起子は、平成二年一〇月二〇日、被告に対し、同年一一月二〇日をもって退職する旨の退職届を提出した。原告は、太田主任に関する問題の発生後、黒田副院長とも話合いの機会を数回持ったが、具体的な解決策も提示されず、かえって、被告病院側からありもしない不正行為の疑いを持たれたため、退職もやむなしと考え、同月一三日、黒田相談役に対し、自己の退職願(平成三年一月二〇日をもって退職)と、遠藤広吉から預かった同人の退職願(平成二年一二月二〇日をもって退職)を提出した。これに対し、黒田相談役は、原告を懲戒解雇とし、通知を出してこの業界で働けないようにしてやると述べた。そこで、原告からこのことを聞いた宍戸医師が、昭和大学藤が丘病院から被告病院に派遣されている中島医師、高山医師とともに、被告病院に赴き、黒田相談役に対し、原告を任意退職の扱いにするよう強く求めたところ、黒田相談役は、原告を解雇とせず、任意退職の扱いとすることを了承した。一方、生田幸も、平成二年一一月一三日、被告に対し、同年一二月二〇日をもって退職したい旨の退職願を提出した。なお、看護婦の坂本ツヤ子は、平成三年二月二〇日まで被告病院に勤務し、技師の岩田綾子は、同年一月八日から産休に入った。

(四) 昭和大学藤が丘病院腎臓内科の忘年会が、平成二年一二月九日、同科の主催で開催された。この忘年会には、被告病院透析室職員の原告、遠藤広吉、吉田勝雄、武藤麻起子(既に退職)、坂本ツヤ子及び生田幸の六名が、宍戸医師の誘いにより、主催者の幹事である小岩医師の了解を得て個人としての立場で出席した。原告以外の五名の者は、原告から、被告病院を退職するので最後にあいさつをしようと誘われたことから、出席することにした。原告は、忘年会の席上、被告病院から出席していた黒田副院長に促されて右六人の代表として、「われわれは、この度黒田病院を辞めることになりました。今までいろいろありがとうございました。」と簡単にあいさつをしたが、退職に至る経緯については話さなかった。出席者のほとんどの者は、このあいさつの前から右六名が被告病院を退職することを知っていた。原告のあいさつの後、黒田副院長が、原告、遠藤広吉、吉田勝雄のところに来て、「いろいろあったが、水に流して、これからも頑張るように。」と言って一人ひとりに握手をした。右忘年会の時点では、原告の後任者の技士長として碓井某が就職することが決まっていた。

(五) 右碓井が、平成二年一二月二〇日過ぎころから、被告病院透析室の技士長として勤務するようになったので、原告は、前任者として、医療機械の保守、点検、操作の説明などできるだけ同人に申し送りをした。そのため、同人との引継ぎに関連して、被告病院の業務に支障が生じたことはなかった。

(六) 被告病院では、前記のとおり、原告の在職当時から、黒田相談役が人事、経理を含む経営の実権を握り、院長である被告や黒田副院長は本来の役目を果たしておらず、被告は、このような黒田相談役の行動を格別制限することもなく、同相談役に同調し、同相談役のなすがままに任せていた。

2  右認定事実によると、被告は、故意又は過失により原告につき事実に反する出入業者との不祥事を疑うなどして、原告を退職に至らせたものであり、その一連の行為は、不法行為(民法七〇九条)に該当するというべきである。

そして、原告の退職に至る事情、その他本件に顕れた諸般の事情を考慮すると、原告の精神的苦痛に対する慰謝料としては、請求どおり三〇万円が相当である。また、弁論の全趣旨によると、原告は、原告訴訟代理人に本件慰謝料請求訴訟の提起、追行を委任したことが認められるところ、その事案の性質、事件の経過、右認容額などを考慮し、右不法行為と相当因果関係のある弁護士費用の損害額を六万円と認める。

二  責任手当の請求権の有無(争点2)について

前記争いがない事実によると、被告病院の賃金規程では、「各人の職務に応じて、責任手当を支給することがある(一二条)。」と規定されている。この文言だけから判断すると、責任手当の支給及び支給の打切りは、被告の裁量によると解されないではない。しかし、証拠(〈証拠・人証略〉)によると、原告は、技師として被告病院の透析業務に携わっていたことから、就職以来平成二年九月までは毎月基本給や他の諸手当のほかに責任手当を支給(毎月二〇日締切り、同月二六日払い・休日のときは翌日払い)され、原告は何ら異議なくこれを受領していたこと、その金額は、三〇〇〇円、五〇〇〇円、一万円、二万円というように順次増額改定され、平成二年には月額二万円とされていたこと、被告は、原告に対する平成二年昇給通知書においても、給与額の内訳の中で責任手当として二万円を記載していること、責任手当は、他の透析技師、看護婦、エックス線技師、理学療法担当職員などにもその能力に応じて支給されていたこと、被告病院側からは職員に対して責任手当の性質について格別説明はなされていなかったこと、以上の事実が認められる。これらの事実によると、責任手当は、労働契約の内容をなす賃金の一部を構成しているというべきであり、使用者である被告において一方的にその支給を打ち切ることはできないものといわなければならない。

そうすると、原告は、被告に対し、平成二年一〇月分から平成三年一月分までの責任手当合計八万円の請求権を有することになる。

三  冬季一時金(賞与)の請求権の有無(争点3)について

被告病院の賃金規程二六条では、賞与(一時金)に関して、別紙(略)記載のとおり定められているのであるから、被告病院の賞与は、一律の部分を設定せず、全額を人事考課により査定する方式、すなわち全額査定方式であり(現実の運用面でも、このことを覆すに足りる証拠はない。)、したがって、その全額について被告による個別の人事考課を要するものであるところ、証拠(〈証拠・人証略〉)によると、被告は、原告の平成二年の冬季賞与について、支給率を一・三と査定し、基本給一七万三四〇〇円に右支給率と出勤率一を掛けた金額二二万五四二〇円を支給額と定めて、これを原告に支給したことが認められる。そうすると、原告が右査定率を超えて基本給の二・五か月分の一時金請求権を有するとすることは無理というほかはない。

もっとも、この点について、原告は、被告から二・五か月分を支給するとの提示及び約束があったと主張しており、証拠(〈人証略〉)によると、平成二年の冬季賞与は、原告については基本給の一・三か月分、遠藤広吉、吉田勝雄についてはそれぞれ一か月分、生田幸については〇・五か月分しか支給されなかったが、太田主任、岩田綾子についてはそれぞれ二・五か月分が支給されたこと、黒田相談役は、原告と吉田勝雄に対しては、不祥事があったことが賞与の減額の理由である旨を述べたこと、また、同相談役は、証人尋問の際、原告、遠藤広吉及び吉田勝雄に対する平成二年の冬季賞与について、前記一連の退職や不祥事がなければ、二・五か月分であろうとの意見を述べていること、以上の事実が認められる。しかし、これらの事実から、被告が原告に対し、基本給の二・五か月分の冬季一時金を支給するとの提示又は約束をしたと認めることや、基本給の二・五か月分の冬季一時金を支給することが労働契約の内容になっていたと認めることは無理であり、ほかに右事実を認めるに足りる証拠も存しない。また、原告は、被告とその職員との間に一時金について年間協定に当たるものが存在したと主張しているが、そのことを認めるに足りる証拠はないし、ほかに(証拠略)を含め原告が冬季一時金の差額につき賃金としての請求権を有することを裏付ける証拠は見当たらない。

したがって、原告は、平成二年の冬季一時金(賞与)の差額分(賃金)の請求権を有しないというべきである。

四  退職金請求権の有無及び金額(争点4)について

1  争点4(一)について

(一) 被告の主張に対する判断

(1) (人証略)によると、被告病院では、平成二年の薬価改定の際、医療機器の業者の見積りを取り直し、仕入先をそれまでのパルメディカルから新たに医工精器に変更したところ、人工腎臓の価格が一個につき五〇〇円、月間では二〇万円くらい安価に仕入れられるようになったこと、平成二年四月以降、透析室で扱っている医療機器の実在庫数がコンピューターに入力された在庫数と合わず、誤差が生じていたことが認められる。しかし、従前の業者の選定等に関しては、原告が関与したことを認めるに足りる証拠はなく、かえって、右証人は、従前の業者の選定については、原告は関係がなく、その責任もない旨を証言しているし、誤差の発生についても、被告主張のように原告が仕入先を操作していたことによるものであることを認めるに足りる証拠はない。また、血液回路の紛失については、原告の技士長としての保管責任が問題となるとしても、原告がこれを横流しするなどしたものでないことは、前記認定のとおりである。

(2) 被告は、原告が製品の使用期限を徒過させてしまった旨を主張しているが、前記認定事実に照らすと、原告にその責任がないことは明らかである。また、証拠上、原告が使用可能な透析装置を故意に分解破損したことや、患者に対し、技士長として許されない対応をしたことは認められない。さらに、前記認定事実によると、原告が後任の透析技師に十分な引継ぎをしなかったといえないことは明らかである。

(3) 被告は、原告が、同年一〇月一三日、黒田相談役に対し、「太田主任を辞めさせないなら、他の看護婦ら全員を辞めさせる。」と言って、同相談役を脅迫したと主張しており、(人証略)中には右主張に副う部分がある。しかし、右証言部分は、(人証略)及び原告本人尋問の結果に照らし、採用することができないし、ほかに右事実を認めるに足りる証拠はない。また、被告は、太田主任と岩田綾子だけが問屋、メーカーの食事への招待に応じなかったと主張しているが、本件において、原告がそのような招待に応じたことやその回数等の立証はなく、原告に懲戒解雇事由があるということはできない。

(4) 被告は、原告が、技士長の地位を利用し、技師、看護婦らを煽動、教唆して、技師一名、看護婦一名を除く全員を退職させたと主張しているが、前記認定事実によると、そのような事実がなかったことは明らかである。

(5) 被告は、上司の許可なくテルモからテレビの寄贈を受けたことを問題にしているが、前記認定事実によると、寄贈を受けたのは、原告個人ではなく、透析室すなわち被告病院であって、そのこと自体格別問題とすべきことではないのであり、原告個人が責任を問われるべきものでもない。また、右寄贈を受けたことを被告に隠すため、原告が被告主張のような何らかの方策を講じたことがあったとしても、前記認定のような被告病院側の対応状況にかんがみると、それが懲戒解雇事由に当たるとまではいえない。

(6) 被告は、原告が技師、看護婦らとともに、昭和大学藤が丘病院の忘年会に出席し、その席で、被告病院を退職する旨言ったことは、被告病院の信用を著しく傷つけたと主張している。しかし、前記認定事実からすると、右忘年会に出席したこと自体が不当な行動であるとはいえないし、その席でなした発言も普通のあいさつにすぎず、ほとんどの出席者も原告ほか五名が退職することは既に知っていたのであるから、被告の右主張は採用することができない。

(7) 証拠(〈人証略〉)及び弁論の全趣旨によると、原告は、平成三年一月一〇日以降、退職日まで休暇をとったこと、しかし、これは、残った有給休暇を退職までに消化するため、まとめてとったものであることが認められるのであり、これをもって、懲戒解雇事由に当たるとはいえない。

(8) 以上のとおり、原告には、被告主張のような懲戒解雇に相当する事由は見当たらない。

(二) ところで、被告病院の就業規則、退職金規程では、懲戒解雇事由と、懲戒解雇された者及び退職又は解雇後に懲戒解雇に相当する事由が発見された者についての支給制限について、別紙記載のとおり定めているが、右のとおり、原告には、在職中の行為について、右就業規則四五条(四四条)の懲戒解雇事由に該当する事実は存しないのであるから、退職金規程一〇条の適用の余地はないというべきである。

したがって、原告は、退職金規程に基づき、被告に対し、退職金請求権を有する。なお、退職金規程二条には、「就業規則の定めるところに基づいて、円満な手続により退職し、完全に所管の業務の引継ぎを完了したとき」に支給する旨規定されているが、前記事情にかんがみると、原告の退職は、この要件を充足するものと認めて差し支えない。

2  争点4(二)について

証拠(〈証拠略〉)及び弁論の全趣旨によると、原告の退職時の基本給(月額)は一七万三四〇〇円、勤務期間は昭和五五年三月二一日から平成三年一月二〇日までの一〇年一〇か月間(一三〇か月間)であることが認められ、また、原告は、被告の一連の不法行為により、退職を余儀なくされたものであるから、退職金算定のための退職事由別係数は、「自己都合によるとき(退職金規程七条2(1))」としてではなく、「病院の都合による解雇のとき(同条2(4))」に準ずるものとして、この規定を類推適用するのが相当である。もっとも、(証拠略)(原告作成の退職願)には、退職理由として「一身上の都合により」と記載されているが、これは、退職願のいわば決まり文句であって、この記載があるからといって、原告の退職を自己都合によるものと認めるべきものではない。

そうすると、原告の退職金の額は、退職金規程により、次のとおり一三九万〇一〇〇円となる。

(計算式)

〈1〉 退職金算定基礎額=退職時の基本給=一七万三四〇〇円

〈2〉 勤続期間(月数)=一三〇

〈3〉 勤続期間別退職金支給率=〇・七四

〈4〉 退職事由別係数=一

〈5〉 原告の退職金=〈1〉×〈2〉×1/12×〈3〉×〈4〉=一三九万〇一〇〇円

(一〇〇円未満切上げ)

なお、退職金の計算においては、右のとおり一〇〇円未満の端数は一〇〇円に切り上げるが(退職金規程一二条)、本件では右端数処理前の金額を請求しているので、認容額も請求どおりの一三九万〇〇九〇円となる。

五  まとめ

以上の次第で、原告の請求は、慰謝料三〇万円、弁護士費用六万円、責任手当八万円、退職金一三九万〇〇九〇円、以上合計一八三万〇〇九〇円及びこれに対する不法行為の後であり、弁済期経過後である平成三年三月一日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余は理由がない。

(裁判官 小佐田潔)

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